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ファミリー通信vol.30/知らないと危険だらけの老後資金
退職後は毎月いくらの生活をしなければいけないんだろう?
定年が近づくとそんな不安が現実的なものとなってきます。
国が公的年金だけでは生活資金が2000万円不足すると発表して以来、社会保障制度への不安を持つ方が格段に増えました。
現役のうちに老後の生活設計(ライフプラン)を考えておかれるなど、生活資金の準備に興味は集中しがちですが、ただ生活資金さえ準備できればそれで安心なのでしょうか?
たとえば高齢となり入院や介護といった健康上の問題が起きてしまったら…
自身で貯めた資金も、
◆ひとりで銀行へ行けず預金が引出せない
あるいは、
◆認知症になってしまい預金が引出せなくなる(凍結)
なんてことが起きてしまいます。
もし預金が凍結すると自分のお金なのに、
◆生活に必要な最低限しか引出せない
◆利用したかった施設の入所費用が払えず入所できない
といった悲劇も起きかねません。
そのための資金として貯めてきたはずなのに理不尽な話ですね。
そして、あってはならないのですが、
◆必要のないものを購入するなどして散財してしまう
◆詐欺に遭い財産を奪われてしまう
常にこのようなリスクが高齢者にあることも知っておくべきです。
つまり、単に老後資金さえ蓄えておけば安心だということではないのです。
ではそうならないために、我々はどんなことを考えておく必要があるのでしょうか?
お分かりのように前述の例は、いずれも高齢者の財産が管理できるしくみを準備しておくことで解決しそうです。
まだお元気なうちに、家族や専門家など信頼できる方に財産管理が任せられる契約を結んでおくというものです。
例えば【事務委任契約】や【任意後見契約】を結ぶことにより、
●自分の代わりに銀行へいって預金を引出してもらえる。
●病院や施設等での事務手続きや費用の支払いを代行してもらえる
あるいは【民事(家族)信託契約】により、
●ご本人の判断能力がなくなっても、預金が凍結せず引出せる
●高齢者を散財や詐欺の被害から守ってあげられる
といったように老後生活に保険がかけられると安心ではないでしょうか。
さらに財産管理にくわえて、もし自身が要介護状態になってしまったら、どこで/誰に/どの資金を用いて/診てもらいたいのか?
認知症で判断能力が無くなったり、事故で寝たきりになったり、意思が伝えられなくなる前に決めておき、診てもらいたい家族に伝えたり、エンディングノートを用いて意思表示をしておかれると安心ではないでしょうか。
人生100年時代、長い先で起こりうる想定問題への備えは、心身ともに健康である今しかできません。
老後資金の準備はもちろんのことですが、自身だけでは解決できない諸問題について、今のうちにご家族で話し合ってみられてはいかがでしょうか?
ファミリー通信vol.29/銀行預金で大丈夫?知らない間に財産が減らない為に
3か月に一度、顧問先・提携専門家・関係者の皆さんへお届けしています
昨今は従来の銀行・ゆうちょ・JA等に加え、コンビニ系・ネット系と銀幅広い金融機関において、円・外貨・仮想通貨と様々な通貨の購入や保有が可能になりました。
さらにこれに加えて、株・投資信託・生命保険・不動産・金・骨董と財産形成には幅広い選択肢があります。
先日当社の顧問先であるAさんは、生命保険の担当者からこんな質問をされたそうです。
「Aさんの財産はインフレリスクに対応できていますか?」
このときAさんにはインフレの意味が分からなかったそうです。
ちなみにインフレ(インフレーション)とは、『お金の価値が下がり物価が上がる』こと。
つまり100円で買えたコーヒーが2倍の200円になり、お金の価値が1/2になってしまう状態です。
同様に例えばAさんが老後のために長年貯めてきた1000万円が、使うときに500万円の価値しかなくなっていたららどうでしょうか。
当然ながら一般的な(円の)銀行預金であれば、このようにインフレの影響を受けてしまいます。
どうやら担当者はその危険性をAさんに伝えたかったようです。
コロナ禍の人手不足や物流の停滞によるモノ不足で物価上昇している現状は、まさに一時的なインフレの状態と言えます。
インフレの原因は国の金融施策や世界情勢の変化など様々ですが、今後インフレが進むとみる専門家は多く、そうなると我々はどうすればいいのでしょうか?
例えば資産の一部を『円預金』以外に置き換える方法があります。
外貨預金や、外貨建もしくは変額タイプの生命保険、あるいは仮想通貨などです。
一部を他の資産に置き換えておくことで、全ての資産が目減りすることは避けられます。
それに加えて、資産の預け先(金融機関等)の経営健全性・運用のスキル・その資産の現金化のしやすさ・受取方法の選択肢の有無・そのときかかる税や法的制限など、将来の受け取りイメージまで考慮されると安心です。
インフレは一例ですが、こういった目減りリスクを十分に理解したうえで、預金や保険に加え、株・投資信託・不動産など複数の資産を上手に保有することで、逆に増やすことも可能となります。
世間一般ではこれを運用と呼んでいます。
ところで、よく相続税の節税対策でアパートを建てられますが、単なる節税がゆえ、経営を管理会社に丸投げされることに非常に勿体なさを感じています。
事業として如何にして安定収益をあげるかを追求されることで、本来得られたであろう遺失利益を得ることが出来るに違いないと考えるのです。
我々は財産をどこでどんなカタチで保有すれば安心で豊かな老後が過ごせ、大切な家族が円満な相続を迎えてくれるのでしょうか?
ご家族の状況や思いは個々に異なります。
また社会保障や税や法律なども合わせて考える必要があります。
やはりこれについては、金融・不動産・税・法律と幅広く、ご家族のことも合わせて長期ビジョンで指南いただけるプロの専門家に相談されることをお勧めします。
ファミリー通信vol.28/今すぐ作っておきたい「とりあえず遺言」とは
3か月に一度、顧問先・提携専門家・関係者の皆さんへお届けしています
自身の相続のことが気がかりでありながら、「まだ早いから」とか、「わが家には遺す財産がないから」とか、
「うちの子ども達は仲がいいから大丈夫だから」といった、
あまり根拠のない理由を自身に言い聞かせ、遺言を考えることを先延ばしにされる方をよく見かけます。
一方昨今のコロナウィルスの世界的な感染拡大の影響による高齢者の死生観の変化から、「人はいつ死ぬかわからないから」と遺言を考える方は増えています。
ちなみに筆者もまだ53歳で本格的な遺言は早いかなとは思いつつ、すでに自筆で遺言書を作成し法務局で保管してもらっています。
それは、妻や子に遺せる財産はまだまだ不明確ではあるものの、そんな状況でも今すぐに用意しておくべき『とりあえず遺言』なるものであります。
とりあえず遺言とは、①もし今自分が亡くなったとしても、家族を困らせないために
②万一の事故や病気などで遺言が書けなくなってしまう前に
とりあえず必要最小限の内容で念のために作っておくものです。
預貯金などは最終的にどのくらい遺せるかまだ分かりませんが、
●自宅の土地・建物は 妻が住み続けられる ようにしておきたい
●会社の自社株は後継 者の長男に確実に渡 さないといけない
といった、すでに気持ちが固まっている財産があれば尚更です。
もしこれら財産の行き先を指定する遺言書が無い場合、妻が自宅に住み続けられなくなったり、後継者に実質的な経営権が移らなかったりと、大きな損失が発生するリスクがあるからです。
このような普段考えることのないご自身に潜むリスクは、法律・税・金融・不動産・・・と幅広い知識がないと気が付かないため、まずは終活や相続の実務経験のある専門家に診てもらうことをお勧めします。
そのうえで将来本格的な遺言書を作成するまでの間の放置できないリスクへの備えとして、『とりあえず遺言』を作成しておかれるとご安心かと思います。
とりあえずとはいえ、一部の財産にのみ言及した内容であったり、すべての財産を誰それにといった包括的なものであったりするだけで、ちゃんとした遺言書としての効力を持っています。
それ以外の財産については先で追加で遺言書を作成したり、より効力のある公正証書と差し替えたりと、お元気なうちは財産の行方を自由に指定変更することができます。
ここで『とりあえず遺言』をどういう形式の遺言書として作成するのがベストかですが、
筆者としては、簡単な内容のものを自筆で作成し、それを法務局で保管してもらうのが一番だと考えています。
ただ場合により、公正証書による本格的な遺言が必要な方もおられます。
それに形式のまえに、「どの財産を・どれだけ・誰に」といった内容が大事です。
この内容が、財産継承をいかに円満かつ損失無く進めることができるかのカギとなりますので、やはり作成前に専門家に相談されることをお勧めします。
ファミリー通信vol.27/世間を騒がせている「贈与税と相続税の一体化」とは
3か月に一度、顧問先・提携専門家・関係者の皆さんへお届けしています
今や相続税のかかる方はもちろん、そうでない方にもメジャーな生前贈与(暦年贈与)。
かわいい子や孫へ、1月1日~12月31日まで年間110万円までは、税金がかからず渡せるというもの。
もともと子の生活費や教育費といった扶養に関するものは、贈与に該当しないため税金はかかりませんが、それ以外の目的でお金が移転すれば、(一部の特例を除いて)夫婦間ですら贈与税が課税されることになっています。
例えば、ご自身の将来の相続のとき、遺言で長男に1000万円を相続させるとしましょう。
このとき相続税が100万円かかるとしたら、長男が実際に手にするのは900万円と減ってしまいます。
しかし同じ1000万円を、生前に毎年100万円ずつ10年間贈与すれば税金がかからず渡すことができてしまうのです。
このように年間110万円までは無税で財産が移転できるため、とくに相続税がかかる方の節税対策として利用が増えてきました。
ここで少し相続税の仕組みを簡単に解説しますと、
遺産総額が『基礎控除額』を超えると、その部分が相続税の対象になります。
基礎控除額とは、3000万円+600万円×相続人の数で、例えば4人家族の父の相続の場合、相続人の数は3なので、4800万円を超える部分が相続税の対象となります。
そして相続税の税率は、この額の大きさに応じて最低10%~最大55%となっており、相続税のかかる方は、税のかからない(もしくは相続税率より贈与税率の方が低い)範囲で贈与した方が多く渡せることになります。
そんなわけで、年間110万円の範囲での生前贈与は、相続税の節税対策として今や定番化しています。
ところが国が用意した生前贈与の仕組みは、相続税の節税で使ってもらうものではなく、相続まで閉じ込められている高齢者の財産を、生前に贈与されることで早く市場に流出させ、経済を活性化させることが目的でした。
この思惑に反して、多くのケースで生前贈与が、相続税の節税だけために、通帳間の移動のみで終わってしまっているなど、目的に及ばなかったようです。
このように、国の施策が結果的に相続税の減収を生み出していることが問題視され、欧米各国の『贈与税と相続税の関係』を参考に、生前贈与の見直しが進められているようです。
これが今世間で『贈与税と相続税の一体化』と資産家を中心に騒がれている一件です。
具体的に生前贈与がどう見直されるかは分かりませんが、贈与を巧みに利用しての相続税の節税は将来的に難しくなるでしょう。
それより、あまり知られていないのですが、相続税のことより、
『大切なご家族にいかに円満に財産を継承できるか』
という相続における最重要テーマに対して、この生前贈与の仕組みが、とても有効かつ幅広い目的で使えます。
ご家族の将来がより安心安全で有利になるように、節税だけに捕らわれず、一歩進んだ活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
ファミリー通信vol.26/いつか必ず起きる相続その時何がおきる?昨年妻に先立たれた80代男性のケース
『転ばぬ先の杖』とは実に端的に言い得た教えであります。
我々が日常生活を平穏無事に過ごしていても、いつ何が起きるか誰にもわかりません。 ましてや人はいつか必ずお亡くなりになるものです。
つまり誰にでも人生に一度必ず相続のタイミングは訪れるもので、このとき決して転ぶことがないよう『早めに杖を用意しておいてくださいね』というのが今号のお話です
先日お会いしたのは、長年連れ添ってきた妻を昨年末に亡くされた80代の男性でした。
妻には家事や家計の一切を任されていただけに、数か月経ったいま家の中は足の踏み場もない状態という。
さらに不動産所得のあった妻の確定申告もしなければいけなくなりてんてこ舞いなのだだとか。
家のどの引出しに何があるかすら分からない状態で、役所や金融機関からの問い合わせや対応に追われる日々が続いていたようです。
そんなある日、妻が株の取引をしていた証券会社の女性担当者が訪問してきたそうで、
「奥様の相続の手続きを私にお任せください」と提示された遺産整理業務(手数料)の見積りはなんと数百万円…
ちなみに遺産整理業務とは『遺言書の確認に始まり、家族関係や財産関係を公文書などで確認し、分割協議書の作成や預貯金の解約、不動産等の名義変更、そして10ヵ月以内の相続税の申告』そういった相続人に課せられる業務を代理手続きしてくれるものです。
相続の手続きは複雑かつ役所や金融機関や様々な専門家と進めるため、大変な労力や時間や費用がかかります。
提示された金額は高額だったものの、いつ終わるか分からない大変な業務を代行してくれると聞き、すぐにでも依頼したい気持ちになられたそうです。
しかし数百万円…
普段関わりのないことだけに、それが常識的な金額なのか判断できなかったことは言うまでもありません。
ところで相続というのは大きな財産が動くタイミングであります。
金融機関をはじめ亡くなられた方の担当者には、これをビジネスチャンスと捉える方もいれば、逆にネガティブに捉える方もいます。
ちなみに今回のケースで証券会社の担当者が相続手続きを任せて欲しい本当の理由をおわかりでしょうか?
高額な遺産整理業務の手数料もありますが、それよりは口座の解約による証券会社からの資金流出を止めること、と想定されます。
これは銀行や保険会社においても同じことが言えそうです。
地方銀行に預けていた預金も、生命保険の保険金も、都会で暮らす子供たちの都市銀行の預金口座に流れていきかねないのです。
さらに金融資産だけでなく不動産についても言えそうです。
ようやく利益が出はじめたアパート等の収益物件を、管理が面倒だからと子供たちが売却しようとしたり、相続税が払えないからと破格の安値での売却を余儀なくされたり…
はたまた亡くなられた病院で、提携先だと紹介されそのまま搬送れた葬儀屋さんにて、
「皆さんそうされていますよ」とか「もう最期ですから」と、ご本人は望まなかったであろう高額な葬儀費用となってしまったり…
そんな結末を数々と見て参りました。
結論ですが『相続のタイミングは誰しも必ずやって来ること、そのとき大きな財産が動くこと、と同時に想定外の失敗が起きる危険性があること』
これを皆さんに知っておいていただきたいと思います。
ただご安心ください。
心身ともにお元気なうちは準備ができます。
残されたご家族が困らないよう、憂いなく相続を迎えるには、税・法律・金融資・不動産といった幅広い資産に対して、
①老後の安心の備え
②円満な財産分割
③相続税納税資金準備④相続税の節税
といった見地から課題を明確にすること。
それを信頼と経験のある専門家に対策だけでなく、相続が起きたあとの手続きが完了するまでしっかりと面倒をみてもらうこと。
これに尽きると考えます。
先述の80代男性の今回の危機に対し水際でお守りできたことを、ご家族から非常に感謝されたことは言うまでもありません。
ただこういったことはよくあるケースです。
このことを皆さんに踏まえていただき、早めにご準備をされることを願っています。
ファミリー通信vol.25/実家や山を相続放棄したい!はたして国は引き取ってくれるか
親族がお亡くなりになったことで予期せぬ財産が手に入る…
それが相続というもの。
しかし相続財産は必ずしも望まれるものばかりではありません。
今回はそんな相続の相続人となったAさんのお話です。
Aさんは故郷で一人暮らしをされていた父を昨年亡くし、母は既に他界、兄弟もいないため父の唯一の相続人となりました。
父が残した財産は実家の土地・建物と山林。 ただAさんには持ち家があり、今後実家に住んでくれる近親者も居そうにありません。
さらに広大な山林は場所すらわからず、特に使い道もなく、どうしたらいいのかAさんは悩んでおられました。
売却を考え不動産会社に相談したところ、資産価値がなく売れないと言われ、残念ながらそれはAさんにとって負の遺産でした。
そこで願わくば相続放棄ができないか相談があったのです。
バブル期に「土地の価値は上昇を続ける」という土地神話を信じ買い漁られてきた遺産は、このように子孫を困惑させているのかもしれません。
負の財産継承については、生前から対策を検討される方は多いようですが、譲渡(売買)や贈与で所有権を移すことは出来ても、放棄することは出来ません。
ただ相続のタイミングには相続放棄という制度があり、もしかしたら負の財産が手放せるチャンスなのかもしれません。
しかし本当にそんな都合のいいことができるのでしょうか?
Aさんのようなケースでは、そのまま解決策が見つからず、結局空き家となってしまうことが多いようです。
さらに悪いのは、その後名義が変えられないまま何代か経た後に、所有者不明土地となってしまうことです。
今や国土の20%におよぶ所有者不明土地は、誰にも処分することができない莫大な負の財産で、大きな社会問題となっています。
ではもしAさんが、これらの財産を相続放棄したとしたら…
そう「国庫に帰属する」つまり国のものになるとされています。
ただ国も活用できず管理だけは必要となる土地を引き受けたり、所有者不在となり固定資産税が回収できなくなったりを、簡単に了承はしないでしょう。
そこで国ではいま、歩み寄りの措置として次のような条件つきの相続放棄を認めることが検討されています。
【相続に関する不動産登記法・民法改正のポイント】
①土地所有権の放棄制度の創設
権利関係に争いがないなど条件を満たす土地が限定。国が所有し相続人が固定資産税を上回る管理料を負担することとなる。
さらに関連制度で、
➁土地に特化した財産管理制度の創設
所在不明な人の土地の第三者による管理が可能となる。
③土地の相続登記の義務化
相続人の一定期間内の名義変更の登記がないと過料など罰金発生。
④遺産分割協議の期限の設定
相続開始から10年を過ぎると法定相続割合での持ち分分割確定。
以上、不要な土地が有効活用されるための制度の発足が予定されています。
我々はご先祖からの大切な財産のひとつである土地をいかに継承していくのか、あるいは有効活用を促すのか、元気なうちに家族と一緒に考えておく必要がありそうです。
ヒジノ通信vol.24/知らなかったら怖い 改正された遺留分制度とは
昨年から配偶者居住権の新設や自筆証書遺言の保管制度の新設と、約40年ぶりに民法の相続部分の改正(相続法の改正)が順次行われてきました。
ヒジノ通信でも第18号や第23号でとりあげさせていただきましたがご記憶にございますでしょうか。
今回の改正はライフスタイルや家庭環境の変化により、旧来の法では不十分となっていた、とくに「妻の権利」が更に守られることとなった権利拡大が中心であります。
その中でも昨年施行された、重要ながらも未だ十分認知されていない、
『遺留分制度の見直し』について皆さんに知っていただきたく、今号のテーマとさせていただきました。
遺留分とは、相続が起きたとき、その相続人が受け取れる最低限の権利の割合のことを言います。
例えば右下イラストのように、亡くなったお父さんの財産が自宅2000万円のみの場合、法定相続割合は長男・長女それぞれ1/2の1000万円ずつとなります。
そしてこの法定相続割合の半分、それぞれ1/4の500万円が遺留分ということになります。
ここでもしお父さんが、財産の全てである実家を長男に相続させる旨を、遺言書に書いていたとしましょう・・・
遺言書の通り実家は一旦長男のものになるのかもしれません。
しかしここでもし長女が不満を感じ権利を主張、長男に遺留分を請求することとなったらどうでしょう?
そうなると長男はこれを無視するわけにはいきません。
かといって実家は分けることが出来ませんし、代わりに現金を渡そうにも、お父さんから受け取った財産に現金はありません。
しかも長男ご自身にも、そのような大金が用意できないとしたら・・・
ただこういったケースにおいても、一般的に行われてきた解決策がありました。
実家の1/4(以上)の権利を長女に持たせる方法です。
ところがこの度の法改正により、この方法では解決できない危険性が高まりました。
さてどういうことか?
上記のケースにおいて、従来は遺留分侵害された長女は『遺留分減殺請求権』をもって長男に遺留分を請求してきました。
前述のように、長女も1/4(長男は3/4)と最低限の持ち分を登記することで、長男が金銭的な負担なく解決出来ていました。
しかし法改正により長女の権利は『遺留分侵害額請求権』に変わりました。
これにより長女は遺留分侵害額を、(実家の持ち分でなく)金銭で長男に払わせることができるようになったのです。
ヒジノ通信vol.23/長生きの時代 もしものことがいつ起きても あなたは安心ですか?
突然ですが皆さんにお尋ねします。
ご自身にもしもの事が起きたら、その後のご自身のお身体のことや財産のことについてどうして欲しいか、ご家族と話し合っておられますでしょうか?
例えば認知症や脳の疾患により判断能力がなくなってしまったとしたら・・・
どこ(自宅・施設・他)で、だれ(家族・ヘルパーさん・他)のお世話になりたいですか?
大切な財産は誰に預かって管理して欲しいですか?
あるいはご自身がお亡くなりになってしまったとしたら・・・
家や墓や家業はどうして欲しいですか? どの財産をだれに継いでもらいたいですか?
このようなことは、誰しもいつ起きるか分かりません。
ただもしそうなったとしても、ご家族が困らないよう、準備されておかれると安心ではないでしょうか。
具体的には、まずはご家族と話し合うことが大事ですが、法律や税といった難しいことも関わってきますので、終活や相続の実務経験のある専門家に関わっていただくことがおすすめです。
そして更に、その思いを具体的にカタチにするためには、文書や契約書として残しておく必要があります。
エンディングノートや任意後見契約・遺言書・家族信託契約などがそれにあたります。
皆さんはこの中で既にされているものがありますか?
ちなみに僕は手書きで遺言書を作成しています。
内容についてはお伝え出来ませんが、今僕が亡くなったら、遺言執行の手続きを誰にしてもらい、誰にどの財産を継いでもらいたいのか、一枚の紙に簡単に書いています。
この僕が作成した遺言書ですが、実はこれまで書斎の二番目の引出しの奥にひっそりと置いてありました。
しかしこのたび、相続法の改正により始まった『自筆証書遺言書保管制度』を利用してみることにしました。
専門家として経験しておきたかったのが主たる目的です。
ただ自筆証書遺言書であれば、書斎の引出しにしまうより、法務局で保管してもらった方が安心だと感じたのは事実です。
実際にその違いはおおよそ左表のような内容になっています。
ヒジノ通信vol.22/新型コロナウィルス 不安は絶大ですが だからこそ今なにをすればいいの
2020年1月某国で発生したとみられる新型コロナウィルスは、またたく間に世界中に広まり、3か月経った今もなお感染の勢いが衰えない状況です。
医療崩壊を防ぎ一刻も早く終息させるため、政府は全国に緊急事態宣言を発令、我々は不要不急の外出の自粛を余儀なくされています。
これにより子供たちは休校で自宅待機、お勤めの方は交代制や自宅勤務に、そして飲食店をはじめ自営業は営業時間の短縮や休業・廃業に追い込まれ、経済的に大変な状況となっております。
さて皆さんは朝から晩までコロナが話題のニュース番組をみられてどうお感じでしょうか?
あくまでも私の個人的見解ですが・・・
こういう状況ではあるものの、かと言ってあまりにも必要以上にマスコミが煽りすぎてはいないでしょうか。
もと広告宣伝業界にいた私としては、見ていると気持ちが滅入るだけの各局のニュースに、これが一部の層に莫大な利益をもたらしているのではとさえ考えてしまうのです。
確かにこのウィルスは感染力の強さや、治療やワクチンの未開発、重症患者のための病床数の不足など怖い部分や見えない部分は多々あります。
ただ一方我々には日々の生活があります。
一家の大黒柱にとって経済活動は必須であり、何の援助も受けられないままずっと家に閉じ篭っているわけにはいきません。
そもそも緊急性や重要度の高い要件があれば、動かざるを得ないわけです。
ここで果たしてでどこまでを不要不急と捉えるかなのですが・・・
終活や相続のご相談のなかで、こんな時だからこそご自身の死と向き合う気持ちになられる方が増えていると感じます。
いま家族会議を開催したり遺言書や家族信託を具体的に検討される方が増えている現実をお伝えしておきたいと思います。
人はいつどうなるか分かりません。
自分亡きあとも、家族が争うことなく幸せに過ごして欲しい思いは誰しも持っておられます。
このたびのコロナで、皆さんが本当に大切なことを考える時間が得られ、家族を思う気持ちが非常に高まっているように思えます。
子や孫とご家族が三代先まで円満でいられるかどうかは、ご先祖の思いを継がれた皆さんにしかできないことです。
このような状況においても、ご相談先からの要望で、マスクをつけ窓を全開にしての、短時間の面談に奔走される専門家の先生が私の周りにいらっしゃいます。
皆さんにおかれましても、今与えられた時間をプラスと捉え、普段できない大事なことに費やしていただきたいと願います。
まだまだコロナの終息は見えませんが、それだけに今この時間をどう過ごすかが、将来の明暗を分けることになりそうです。
ヒジノ通信vol.21/人生100年時代 待っているのは充実の老後か それとも・・・
ひとりでも多くの方に相続について正しく知っていただき、一軒でも多くのご家族に争いのない円満な相続を迎えて欲しい・・・
そんな思いで1500日以上、毎日書き続けてきた(インターネット上の)ブログをこのたび終了させていただくこととなりました。
諸々の理由のなかで、ブログにかけていた毎日の2時間がとても重くなっていた状況があります。
不特定多数の方々への広く浅い情報発信より、身近で僕を必要としてくれる顧問先やご相談者への個別対応や、共に頑張っている仲間との情報共有、より役にたつ専門知識や経験の習得にもっと時間を傾けるべきだという判断に至りました。
今やインターネットによる情報発信は外せない時代ではありますが、個別に異なる状況にむけたアドバイスやプライバシーに関わる重要なことは、やはり顔と顔を合わせてのアナログな情報交換が求められます。
これからの時代このようなインターネットやIT(情報技術)・AI(人工知能)といったデジタルの進展は避けられず、これを我々はアナログと使い分け上手に付き合っていく必要があります。
先日日経新聞にこんな記事が出ていました。
黒字リストラ拡大
昨年9100人
デジタル化に着手
好業績なのに人員削減を行う会社が増えているようです。
昨年早期の希望退職を実施した上場会社35社のうち、6割におよぶ業績黒字会社の人員削減は、電機・製薬をはじめ中高年を中心に9000人超と前年の3倍に増えたそうです。
会社は若手社員への給与の再配分やデジタル時代にむけた人員確保を迫られており、業績好調で雇用環境もいいうちに人員構成を見直すという動きが進んでいるということのようです。
確かにこれからのデジタル時代にむけて、新たな人材確保や体制づくりは各社にとって急務であり、これは新入社員で年収1000万という会社が珍しくない現状が物語っています。
会社によってはこのような専門分野に長けた人財に、相応の報酬を用意するところもあるようで、我が家の高2の息子をはじめ若い人たちが、この分野に非常に興味を示していることは言うまでもありません。
しかし一方で、人生100年時代と言われるこれからの時代、早期退職を迫られ決意した中高年の皆さんはどうされるのでしょうか?
しっかりと退職金が用意される大企業サラリーマンなら心配には及ばないかもしれませんが、これは一部の人ですからね。
さらに今後、一般事務や受付、警備員やタクシー運転手といったAIに変わるたくさんの仕事が無くなると言われています。
人生100年と言われながら、出来る仕事がどんどん狭まる高齢者はいったいどうすればいのでしょうか。