Archive for the ‘法改正(随時更新)’ Category
令和6(2024)年にはじまる暦年贈与の改正とは
これまでテッパンの節税対策として利用されてきた『年間110万円まで非課税の暦年贈与』
2024年である今年からこの制度が改正されるということで、
特に相続税がかかる方にとって、今後どのように改正されるのか戦々恐々とされておられるのではないでしょうか。
詳しく説明するとボリュームのある話になりますので簡単にポイントを説明いたします。
もともと暦年贈与というものは年間110万円までは非課税で渡せるため、相続税の対象となる方ができるだけ税金を減らす方法として、毎年一定額を子や孫などに贈与していくカタチで多くの資産家に利用されてきました。
そして贈与者(親など)に相続がおきたとき、これまで贈与を受けてきた相続人(子など)に対して、
さかのぼって3年間の贈与はなかった(税務上)として、この期間分の贈与総額をこの相続人が相続する財産総額に加算され計算されるというものです。
これが今回の改正でこの持ち戻される3年という期間が4年延長され7年になる、つまり増税されることに。
そもそも暦年贈与は高齢者の預貯金などのカタチで滞っている財産を、贈与というカタチで子や孫に移転され消費されることで経済活性化につなげようという国の施策なのですが、
これが目論見がはずれ資産家の節税対策として多用されてしまっていることへの今回の対応策といえます。
ただ令和6年(2024年)から持ち戻し期間がいきなり7年になるわけではありません。
下図のように移行期間がありますのでお間違えなく。
一方これに対してもう一つの定番の贈与の方法である『相続時精算課税制度』ですが、これは今回の改正でとても使いやすく改善されました。
これについては仕組みが複雑であり誤解が生じ兼ねませんのでここでの解説は割愛させていただきます。
今後はこれらの贈与を組み合わせるなどして、いかに目的に沿った有効活用ができるかがポイントとなります。
具体的な活用方法などのご質問やご不明点などありましたらお尋ねください。
尚二つの贈与については下記をご参照ください。
参照;令和6年(2024年)1月1日施行「贈与税および相続税の税制改正のあらまし」
0023006-004.pdf (nta.go.jp)
その後暦年贈与はどうなった?
国会で議論されていた『贈与税と相続税の一体化』
年間110万円までの贈与が非課税となる暦年贈与のメリットが、早ければ2022年に無くなりそうだと騒がれておりましたが。。。
結局議論は持ち越しとなったようですね。
相続税対策の必要な当事者が多いであろう国会で、テッパンの節税対策を封印する議論はなかなか進みそうにないように感じますが。。。
そもそも歴年贈与における国の思惑は、相続まで閉じ込められてしまいがちな預貯金などの資産が、より早く若年層へシフトされ経済の活性化が図られることが目的であります。
日本では相続税と贈与税が別の税体系として存在しており、贈与税は相続税の累進回避(節税対策)を防止するために高い税率が設定されています。
このため相続税のかからない層にとっては、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で、高額な相続税のかかる層にとっては、財産を分割贈与することで相続税の累進回避をしながら多額の財産を移転することが可能となっている現状。
つまり多すぎず少なすぎず、自身にちょうどよい額を毎年移転していくことで大きな税対策が実現できているのです。
海外では財産移転の時期や金額に応じて異なる税率を課すことなく、すべて相続時にまとめて相続税の対象財産として計算される国もあり、今後も課税の公平性や経済活性化の両面から、議論は続けられるものとみられます。
いずれにしても、
子や孫といった大切なご家族への財産移転や継承は税金のこともありますが、いかに円満に財産を引き継いでもらい、その後の人生に役立ててもらえるかが重要ではないでしょうか。
2022年の税制改正発表、さてどうなるの?
住宅や配当、節税余地狭まる
ローン控除、残高上限下げ
2022年税制改正大綱か与党から発表された。
●住宅ローン控除が、
[現状]年末ローン残高の1%×10年間(単純計算10%)
[改正]0.7%×13年間(9.1%)
●住宅取得資金贈与の非課税額が、
[現状]最大1500万円
[改正]最大1000万円
と減税枠が目減りすることをはじめ、諸々の改正内容は中低所得者層に地味に影響を及ぼしていくもの…つまり増税ということ
そもそもこの2年間、新型コロナ対策で巨額の対策資金を放出してきただけに、増税は避けられないであろう。
ただ富裕層や相続に関わる専門家にとって、今回の改正で戦々恐々としていた、暦年贈与を使った相続税節税の封じ込み(暦年贈与の見直し)へは、今回まったく手がつけられず…
ということで次年度以降の改正の予測としては、相続人への贈与の3年持戻し(生前贈与加算)の期間が、3年→5年や10年に延長されるのではとか、相続時精算課税制度が見直されるのではとか、税の専門家で議論されているようですが…
さてさてどうなるのでしょうか
税は我々の生活を豊かにするために必要なもの。ただ必要以上に支払うのは勿体無い。どうせなら家族はじめ大切な人のために使いたい。
知っているか知らないかで支払う税が大きく違うのであれば、知っているに越したことはない。税だけを考えて対策したものの家族円満が守られない結果となることも…
それから税だけじゃなく法律・金融・不動産・医療・介護・住まい…と、暮らしで使える制度は、やはり信頼できる専門家に聞いてみるのが一番である。
相続で取得した不要土地。国が引き取ってくれるって?
親の相続で不動産(土地・建物)を取得した子が遠方に住んでいて、物理的な管理が困難であったり費用がかかったり、
あるいは身内に利用者がいないため第三者へ貸したり売ったりしたいものの、なかなか借り手や買い手が見つからなかったりと、
できれば国に引き取って欲しいと考える世帯はなんと20%もいるのだとか・・・
この現状が所有者不明土地を生み出してきたことを問題視してきた国は、令和3年『相続土地国庫帰属制度』を創設しました。
これにより相続または遺贈により土地の所有権を得た者が、土地を手放して国庫に帰属させる(所有権と移転する)ことが可能になるというもの。
ただしどんな土地でもいいわけではなく以下のようなケースは却下されるようです。
却下条件
❶建物が存在する土地
❷担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
❸通路その他の他人による使用が予想される土地として政令で定めるものが含まれる土地
❹土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
❺境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
など
しかも無料で引き取ってもらえるというものではなく、管理料として固定資産税より高めの額の10年分を納める必要があるようです。
国としても管理する必要が出てきますので、利用価値のある不動産なら引き取り対象とされる可能性は高いと考えられますが、
誰も欲しがらない負の不動産の引き取りは難しいのではないでしょうか。
かといえ従来なかった新しい制度ができるということで、今後の動きに期待できそうですね。
相続登記が義務化され罰則も…
誰の所有になっているかわからない・・・
そんな所有者不明の土地がいま日本で国土の20%、ほぼ九州の面積分あると言われています。
法務局で調べた登記簿に記載されてある所有者は既に何十年も前に亡くなった方であるようなケースも多く、この状態ではこの土地に家を建てることも、売って欲しいと言われた方に売ることも、利用したい方に貸すこともできません。
ではなぜこのように土地の名義が故人のままになっているのでしょうか?
それは過去に相続が起きた際に、その土地の利用価値がないため誰も欲しがらず次の所有者が決まらなかったり、もしくは次の所有者は決まったものの登記費用がかかるため、名義変更されないまま放置されたことによるものが大部分であります。
このように有効活用可能な土地が放置されてきたことで、経済の活性化の足かせにもなってきた状態を問題視してきた国は、相続による土地の名義変更(相続登記)を義務化する法案を成立し2021年4月公布しました。
これにより今後3年以内(2024年までに)に下記の制度がスタート(施行)します。
❶不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける
❷正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料(罰金)に処することとする。
つまり、現在すでに所有者不明となっている土地についても、施行日から3年以内(最長でも2027年まで)の相続登記が必須となります。
わが家の土地は大丈夫なのか?
かといって誰の名義に変えればいいのか?
やり方次第では大きな損失にもつながる税や法律のからむ話ですので、まずは信頼できる専門家へ一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。