Archive for the ‘ファミリー通信(3カ月毎更新)’ Category

ファミリー通信vol.34/大事な相続のこと あなたは誰に相談されますか?

2023-05-01

「誰に相談したらいいのかわからない…」 
このように相続に関して相談する相手がいないという声をよく耳にします。
 それもそのはず、相続は一生に何度も経験できることではありませんし、他人に言いにくい家族関係や財産に関わる話ですから当然のことかもしれません。

 時々プロも顔負けの勉強熱心な方もおられますが、多くの方はお困りかと感じます。
 おそらく税理士・行政書士・司法書士といった士業の方に相談することなんだろうと考えるものの、専門家の知人も近くに居ない…
 もしくはインターネット等で調べてみるも、どの専門家を選んだらいいのか分からない…
 そして「考えるのはまだ早いからいいか」などと先延ばしとなり、そのまま相続を迎えてしまうケースも多いのではないでしょうか。

 ここで一般的に相続の相談相手と考えられる専門家は、
◆税金に関することは 税理士に
◆法律に関することは 行政書士・司法書士・ 弁護士等に
◆ほか不動産・金融・ 葬儀・遺品整理・・・
にと幅広く存在します。
 また医師の世界に外科・皮膚科・耳鼻科と専門分野があるように、税理士の世界にも法人税・所得税・資産(相続)税と専門分野があり、これは各々専門家においても同様であります。
 これらの数ある専門家の中から自分の目的に合う専門家を探して、個別に相談していくのは、非常に現実的ではないことをご理解いただけると思います。

 さらに今ご自身が気になっている心配ごとは、相続における沢山の課題のうちの氷山の一角に過ぎない可能性があります。
 ではどのようなことを考えておく必要があるのでしょうか?
 普段我々が相続を考えるとき、次のような視点で課題確認を行っていただいています。

❶老後のライフプラン
・安心できる長期にわ たる生活資金は準備 されているか
・介護や認知症の状態 になった際の備えは できているか
 (どこで・誰に・費用は)
・判断能力が無くなる 等で凍結してしまわ ない為の財産管理の 備えはできているか
 (どこで・誰に・方法は)


❷円満な遺産分割
・不平等となる特別受 益(過去の贈与)は存 在しないか
・後継者への財産集中 等による相続人間の 不平等感はないか
・相続人が最低限受取 れる権利の割合であ る『遺留分』への対 策はできているか
・遺留分を請求された 際に支払える資金は 準備できているか

❸納税資金準備
・相続税は10ヵ月以 内に現金納付となる が大丈夫か
・納税資金は確保でき ているか
・どのような方法で納 税資金を準備するか

❹節税対策
・節税対策は必要か
・贈与は税務署に指摘 されないよう正しく 成されているか
・今後改正される暦年 贈与の仕組みが有効 に使えるか等々 

 こういった確認項目のなかで、ご本人では気付けない誤りなど重要課題が存在する危険性が十分にあります。
 このように相続で考えるべき課題は幅広く、ご自身で進めることは容易ではありません。
 もし皆さんの代わりに個別に専門家とやり取りをしてくれて、全てを解決に導いてくれる方がいたらどうでしょうか?
 言わばあなたの相続の窓口となってくれる『お抱えコンシェルジュ』
 すべてを任せられる相続コンサルタントの役割が、今後ますます重要になっていくと考えられます。

ファミリー通信vol.33/親子三世代で一丸となって大切な資産を守る

2023-02-01

皆さんもあの人気漫画「サザエさん」はご存じかと思います。
親子三世代が同居する、昭和の家族の日常が描かれたほのぼのとしたドラマですね。

 昔はこのような家庭環境はごく普通で、子育てや家事や仕事(農業はじめ家業)など協力し合い生活してきました。
 それが日本の経済構造の変化や時代の流れにより、今では親子二世代いわゆる核家族が一般的となっています。

 独立して親と離れて暮らすため、住宅費が余分にかかることや、子育てや家事の協力が得られないことで、その分の生活費も余分にかかることになります。
 その一方で夫婦共働きなどにより、収入とのバランスはとれてきたのかもしれません。

 ところが、ここ数年で我々を取り巻く環境は大きく変化しました。


 世界を巻き込む新型コロナウィルスの蔓延・ロシアとウクライナの戦争、そしてそれらが起因ともなった物価の高騰やインフレ。
 しかしながらの不景気・賃金横這いが我々の生活を脅かしています。

 この急激な環境変化は他人事でなく、離れて暮らす子や孫にも、じわじわと大きな負担を強いているのです。

 「人生100年時代」長生きがゆえの老後の生活資金不足の問題が叫ばれるなか、我々はいかにして長期にわたり安心で豊かな生活を守ることができるかが重要な課題です。

 かといえ、三世代同居の生活に戻ることは非現実的で、核家族化の現状で何ができるかを、具体的に考える必要があります。
 そこで今回は、三世代にわたるご家族の財産形成・財産継承の対策において、多くの方に喜んでもらえた例を紹介いたします。

 これは『離れて暮らす子や孫にかかる生活費や将来のための貯蓄について、三世代で一緒に考える』というものです。

 例えば「子や孫に残してあげたい」と銀行に大きなお金を預けている方をよく見かけますが、これが実に勿体ない場合が多いのです。
 預けているというより、閉じ込めているという表現が適切なのは、

◆将来これが物価高により資産価値が目減りしてしまったり
◆相続のとき多額の税金を差し引かれ子や孫の手に渡ったり
◆あげたい人の手に渡らなかったり
するからであります。

 一方で子や孫といえばこんな状況も

●少ない給料から金利を支払いながら多額の住宅ローンを組んだり
●掛け捨てで全く手残りのない生命保険をかけたり
●夫婦で必死で頑張って子の教育費を支払っていたり

 先の相続で渡してあげるのではなく、もし今何かしらの援助が今できるとしたら・・・

 子や孫の生活が楽になるだけでなく、将来かかる税金が圧縮できたり、ご一族の財産もより多く残せたり、もしくは増やせたりも可能かもしれません。

 このように、三世代にわたる皆さんの現状や思いや考え方を確認共有できることで、そしてそこに法務・税務・金融・不動産といった専門知識が加味されることで、ご一族にとって大きなメリットが生まれます。

 大切な子や孫が末永く幸せであるために、皆さんが大きな力になり得るということです。

 誰も予測できなかった社会情勢のなか、今すぐ始められる『親子三世代で考えてみる』対策を是非おすすめしたいと思います。

ファミリー通信vol.32/不動産オーナーに潜むリスクと考えて欲しいこと

2022-11-01

 今回は当社がこれまで様々な方の相続に携わった経験から、


『賃貸アパート等の収益不動産を所有されるオーナーや、将来所有を検討されている方々に是非知っておいて欲しいこと』をまとめてみました。

 一般的に不動産オーナーとは、自宅の他に所有する土地や建物を、賃貸したり売買したりすることにより収益を得ている方をいいます。

 金融機関からの借入れにより、所有する土地の上にアパートなど賃貸用建物を建てられる方も多いと思います。

土地の広さや立地にもよりますが、借入れはときに何千万円や何億円にもなるケースもあります。

 そのような大きなリスクを負ってまで始める不動産事業ってどんなものでしょうか?

 『一括借上げ・30年家賃保証!』
 こんなキャッチフレーズをよく目にします。 

たとえ借金を背負っても、保証された家賃収入で完済できるから安心と思いがちです。

 お勤め先から給与をもらいながら、不労所得として家賃収入が入ってくることに魅力を感じて始められる方もいるようです。

 ただオーナーの皆さんは、もともと不動産事業に興味があったというより、相続対策として始められたケースが多いのではないでしょうか。

 例えば相続税がかかるくらい財産がある方も、借金というマイナスの財産が加わると、課税対象額が減り相続税が軽減されます。

 さらに土地に建物が建つことで(活用しにくくなることで)、土地の評価額が下がります。
 これらにより二重の節税効果が生まれます。

 ただ不動産を用いた極端な節税対策には、以前より税務当局の目が厳しくなっており限界があります。

 このように、不動産オーナーが保有する資産には、一般的な預貯金・生命保険・有価証券・不動産に加えて、割と大きな借金がありがちです。

 ちなみに金融機関から借入れする際には、返済が滞るリスクに備えて、オーナーが所有する土地や建物に抵当権(担保)が設定されるのが一般的です。

 つまり計画通りに収益が得られず返済不能となると、土地や建物を手放さざるを得なくなるのです。
 このようなリスクを多くの不動産オーナーが抱えておられる現実があります。

 また事業開始から年数が経過し後継者の代ともなると、建物の老朽化に伴う家賃の引下げや修繕・リフォーム費用の発生が考えられます。

 そうなると多額の資金が必要となりますが、事業を管理会社へ丸投げされている皆さんは、果たして計画的に資金準備されているのでしょうか?

 もし準備しないまま相続が起きてしまったら、相続人は大きな負担を強いられることになると考えられます。

 このように不動産事業は単なる節税対策ではなく、長期にわたり事業を行っていく認識と覚悟が必要です。

 ここで不動産オーナーの相続人の多くが、次のような不安を感じている実態があります。

①建物が古く今後どうしたらいいのか
②借金が問題なく完済できるのか
③相続税はどのくらいかかるのか

 などすぐに解消できないものもあります。

 こういった不安が解消されないまま相続することにならないよう、不動産オーナーの皆さんは専門家に相談するなどして、早めに解決しておく必要がありそうです。

ファミリー通信vol.31/進み続ける円安 あなたの財産は大丈夫ですか?

2022-08-01

 1ドル138円超


 ここ10年間じわじわと進んできた円安(対米国ドル)は、今年に入り一気に進み150円も視野に入ってきました。

 長引く金融緩和による低金利の副作用と言えますが、

コロナからの景気回復のため金利が上げられない等で、この状況は当面続く若しくはより進む可能性もあります。
 

円安は海外からの観光客向けや輸出関連など一部の産業にとっては、海外の消費者が商品やサービスを安く買えるため景気回復の追い風となるでしょう。


 ただ逆に日本人の海外旅行や原材料を輸入で賄う多くの産業にとっては、

価格の高騰が逆風となり、この問題が大きいとされる日本は今試練の時期かもしれません。

 最近、外貨建て保険商品など、為替により毎月の支払額が変動するような金融商品に関する相談が増えました。

「このまま支払を続けて大丈夫なのか?」 

「いま解約したら幾ら戻ってくるのか?」 

「どのタイミングで契約したらいいのか?」 

といったものが主な内容です。

 過去に今より円高で購入された商品は、

円に換算すると想定以上に貯蓄額が支払額を上回っている可能性もあります。

 為替が影響する金融商品等は、円安下で買いにくい一方、

昨今の海外諸国の金利上昇により積立利率が急激に上がり、非常に売れている商品も出ています。

 従来進めてきた対策も、このように経済状況が大きく変化するタイミングで見直してみることも必要かもしれません。

 ただ本来どんな目的でその金融商品を購入したかや、商品設計の仕組みについて改めて確認し、自身のライフプランと照らし合わせ正しく判断をすることが賢明かと思われます。


 さて老後のための資産形成をはじめ、金融商品の目的は様々ですが、

自身で使いきらず最終的に残ったものは相続財産となります。

 金融商品のなかでも特に生命保険を利用する場合、

保険金として指定する相続人へ相続税がかからないカタチで残すことも可能です。

 ご家族など大切な方へ財産を残すことを考えた場合、その財産が継承者にとって、
●必要なもの
●価値の高いもの
●使いやすいもの


だと喜んでもらえるのではないでしょうか。

 前述のように為替や市場金利がプラスにもマイナスにも作用する金融商品も一つの財産ですが、

逆に作用する金融商品や、或いは貴金属や不動産といったそのような影響をうけにくい財産もあります。

 10年後や20年後がどのような世の中になっているのかは誰にもわかりませんが、

その時の状況に応じて財産構成を見直すなど的確に判断し対応していくしかありません。

 ご自身のために築いた財産もいずれ後継者へ引き継がれることを考慮して、

いかに効率よく豊かな老後や安心できる相続を迎えることができるか、

長期的な視点で計画的に進めていかれることをお勧めしたいと思います。

ファミリー通信vol.30/知らないと危険だらけの老後資金

2022-05-01

退職後は毎月いくらの生活をしなければいけないんだろう?

定年が近づくとそんな不安が現実的なものとなってきます。

国が公的年金だけでは生活資金が2000万円不足すると発表して以来、社会保障制度への不安を持つ方が格段に増えました。

現役のうちに老後の生活設計(ライフプラン)を考えておかれるなど、生活資金の準備に興味は集中しがちですが、ただ生活資金さえ準備できればそれで安心なのでしょうか?

たとえば高齢となり入院や介護といった健康上の問題が起きてしまったら…

 自身で貯めた資金も、

◆ひとりで銀行へ行けず預金が引出せない

 あるいは、

◆認知症になってしまい預金が引出せなくなる(凍結)

 なんてことが起きてしまいます。

 もし預金が凍結すると自分のお金なのに、

◆生活に必要な最低限しか引出せない

◆利用したかった施設の入所費用が払えず入所できない

 といった悲劇も起きかねません。

 そのための資金として貯めてきたはずなのに理不尽な話ですね。

 そして、あってはならないのですが、

◆必要のないものを購入するなどして散財してしまう

◆詐欺に遭い財産を奪われてしまう

 常にこのようなリスクが高齢者にあることも知っておくべきです。

 つまり、単に老後資金さえ蓄えておけば安心だということではないのです。

 ではそうならないために、我々はどんなことを考えておく必要があるのでしょうか?

 お分かりのように前述の例は、いずれも高齢者の財産が管理できるしくみを準備しておくことで解決しそうです。

 まだお元気なうちに、家族や専門家など信頼できる方に財産管理が任せられる契約を結んでおくというものです。

例えば【事務委任契約】や【任意後見契約】を結ぶことにより、

●自分の代わりに銀行へいって預金を引出してもらえる。

●病院や施設等での事務手続きや費用の支払いを代行してもらえる

 あるいは【民事(家族)信託契約】により、

●ご本人の判断能力がなくなっても、預金が凍結せず引出せる

●高齢者を散財や詐欺の被害から守ってあげられる

 といったように老後生活に保険がかけられると安心ではないでしょうか。

 さらに財産管理にくわえて、もし自身が要介護状態になってしまったら、どこで/誰に/どの資金を用いて/診てもらいたいのか?

 認知症で判断能力が無くなったり、事故で寝たきりになったり、意思が伝えられなくなる前に決めておき、診てもらいたい家族に伝えたり、エンディングノートを用いて意思表示をしておかれると安心ではないでしょうか。

 人生100年時代、長い先で起こりうる想定問題への備えは、心身ともに健康である今しかできません。

 老後資金の準備はもちろんのことですが、自身だけでは解決できない諸問題について、今のうちにご家族で話し合ってみられてはいかがでしょうか?

ファミリー通信vol.29/銀行預金で大丈夫?知らない間に財産が減らない為に

2022-02-01

3か月に一度、顧問先・提携専門家・関係者の皆さんへお届けしています

 昨今は従来の銀行・ゆうちょ・JA等に加え、コンビニ系・ネット系と銀幅広い金融機関において、円・外貨・仮想通貨と様々な通貨の購入や保有が可能になりました。
 さらにこれに加えて、株・投資信託・生命保険・不動産・金・骨董と財産形成には幅広い選択肢があります。
 先日当社の顧問先であるAさんは、生命保険の担当者からこんな質問をされたそうです。
「Aさんの財産はインフレリスクに対応できていますか?」
 このときAさんにはインフレの意味が分からなかったそうです。
 ちなみにインフレ(インフレーション)とは、『お金の価値が下がり物価が上がる』こと。
 つまり100円で買えたコーヒーが2倍の200円になり、お金の価値が1/2になってしまう状態です。
 同様に例えばAさんが老後のために長年貯めてきた1000万円が、使うときに500万円の価値しかなくなっていたららどうでしょうか。
 当然ながら一般的な(円の)銀行預金であれば、このようにインフレの影響を受けてしまいます。
 どうやら担当者はその危険性をAさんに伝えたかったようです。
 コロナ禍の人手不足や物流の停滞によるモノ不足で物価上昇している現状は、まさに一時的なインフレの状態と言えます。
 インフレの原因は国の金融施策や世界情勢の変化など様々ですが、今後インフレが進むとみる専門家は多く、そうなると我々はどうすればいいのでしょうか?
 例えば資産の一部を『円預金』以外に置き換える方法があります。
 外貨預金や、外貨建もしくは変額タイプの生命保険、あるいは仮想通貨などです。
 一部を他の資産に置き換えておくことで、全ての資産が目減りすることは避けられます。
 それに加えて、資産の預け先(金融機関等)の経営健全性・運用のスキル・その資産の現金化のしやすさ・受取方法の選択肢の有無・そのときかかる税や法的制限など、将来の受け取りイメージまで考慮されると安心です。
 インフレは一例ですが、こういった目減りリスクを十分に理解したうえで、預金や保険に加え、株・投資信託・不動産など複数の資産を上手に保有することで、逆に増やすことも可能となります。
 世間一般ではこれを運用と呼んでいます。
 ところで、よく相続税の節税対策でアパートを建てられますが、単なる節税がゆえ、経営を管理会社に丸投げされることに非常に勿体なさを感じています。
 事業として如何にして安定収益をあげるかを追求されることで、本来得られたであろう遺失利益を得ることが出来るに違いないと考えるのです。
 我々は財産をどこでどんなカタチで保有すれば安心で豊かな老後が過ごせ、大切な家族が円満な相続を迎えてくれるのでしょうか?
 ご家族の状況や思いは個々に異なります。
 また社会保障や税や法律なども合わせて考える必要があります。
 やはりこれについては、金融・不動産・税・法律と幅広く、ご家族のことも合わせて長期ビジョンで指南いただけるプロの専門家に相談されることをお勧めします。

ファミリー通信vol.28/今すぐ作っておきたい「とりあえず遺言」とは

2021-11-01

3か月に一度、顧問先・提携専門家・関係者の皆さんへお届けしています

自身の相続のことが気がかりでありながら、「まだ早いから」とか、「わが家には遺す財産がないから」とか、
「うちの子ども達は仲がいいから大丈夫だから」といった、
あまり根拠のない理由を自身に言い聞かせ、遺言を考えることを先延ばしにされる方をよく見かけます。
 一方昨今のコロナウィルスの世界的な感染拡大の影響による高齢者の死生観の変化から、「人はいつ死ぬかわからないから」と遺言を考える方は増えています。
 ちなみに筆者もまだ53歳で本格的な遺言は早いかなとは思いつつ、すでに自筆で遺言書を作成し法務局で保管してもらっています。
 それは、妻や子に遺せる財産はまだまだ不明確ではあるものの、そんな状況でも今すぐに用意しておくべき『とりあえず遺言』なるものであります。
 とりあえず遺言とは、①もし今自分が亡くなったとしても、家族を困らせないために
②万一の事故や病気などで遺言が書けなくなってしまう前に
とりあえず必要最小限の内容で念のために作っておくものです。
 預貯金などは最終的にどのくらい遺せるかまだ分かりませんが、
●自宅の土地・建物は 妻が住み続けられる ようにしておきたい
●会社の自社株は後継 者の長男に確実に渡 さないといけない
といった、すでに気持ちが固まっている財産があれば尚更です。
 もしこれら財産の行き先を指定する遺言書が無い場合、妻が自宅に住み続けられなくなったり、後継者に実質的な経営権が移らなかったりと、大きな損失が発生するリスクがあるからです。
 このような普段考えることのないご自身に潜むリスクは、法律・税・金融・不動産・・・と幅広い知識がないと気が付かないため、まずは終活や相続の実務経験のある専門家に診てもらうことをお勧めします。
 そのうえで将来本格的な遺言書を作成するまでの間の放置できないリスクへの備えとして、『とりあえず遺言』を作成しておかれるとご安心かと思います。
 とりあえずとはいえ、一部の財産にのみ言及した内容であったり、すべての財産を誰それにといった包括的なものであったりするだけで、ちゃんとした遺言書としての効力を持っています。
 それ以外の財産については先で追加で遺言書を作成したり、より効力のある公正証書と差し替えたりと、お元気なうちは財産の行方を自由に指定変更することができます。
 ここで『とりあえず遺言』をどういう形式の遺言書として作成するのがベストかですが、
 筆者としては、簡単な内容のものを自筆で作成し、それを法務局で保管してもらうのが一番だと考えています。
 ただ場合により、公正証書による本格的な遺言が必要な方もおられます。
 それに形式のまえに、「どの財産を・どれだけ・誰に」といった内容が大事です。
 この内容が、財産継承をいかに円満かつ損失無く進めることができるかのカギとなりますので、やはり作成前に専門家に相談されることをお勧めします。

ファミリー通信vol.27/世間を騒がせている「贈与税と相続税の一体化」とは

2021-08-01

3か月に一度、顧問先・提携専門家・関係者の皆さんへお届けしています

今や相続税のかかる方はもちろん、そうでない方にもメジャーな生前贈与(暦年贈与)。
 かわいい子や孫へ、1月1日~12月31日まで年間110万円までは、税金がかからず渡せるというもの。
 もともと子の生活費や教育費といった扶養に関するものは、贈与に該当しないため税金はかかりませんが、それ以外の目的でお金が移転すれば、(一部の特例を除いて)夫婦間ですら贈与税が課税されることになっています。
 例えば、ご自身の将来の相続のとき、遺言で長男に1000万円を相続させるとしましょう。
 このとき相続税が100万円かかるとしたら、長男が実際に手にするのは900万円と減ってしまいます。
 しかし同じ1000万円を、生前に毎年100万円ずつ10年間贈与すれば税金がかからず渡すことができてしまうのです。
 このように年間110万円までは無税で財産が移転できるため、とくに相続税がかかる方の節税対策として利用が増えてきました。
 ここで少し相続税の仕組みを簡単に解説しますと、
 遺産総額が『基礎控除額』を超えると、その部分が相続税の対象になります。
 基礎控除額とは、3000万円+600万円×相続人の数で、例えば4人家族の父の相続の場合、相続人の数は3なので、4800万円を超える部分が相続税の対象となります。
 そして相続税の税率は、この額の大きさに応じて最低10%~最大55%となっており、相続税のかかる方は、税のかからない(もしくは相続税率より贈与税率の方が低い)範囲で贈与した方が多く渡せることになります。
 そんなわけで、年間110万円の範囲での生前贈与は、相続税の節税対策として今や定番化しています。
 ところが国が用意した生前贈与の仕組みは、相続税の節税で使ってもらうものではなく、相続まで閉じ込められている高齢者の財産を、生前に贈与されることで早く市場に流出させ、経済を活性化させることが目的でした。
 この思惑に反して、多くのケースで生前贈与が、相続税の節税だけために、通帳間の移動のみで終わってしまっているなど、目的に及ばなかったようです。
 このように、国の施策が結果的に相続税の減収を生み出していることが問題視され、欧米各国の『贈与税と相続税の関係』を参考に、生前贈与の見直しが進められているようです。
 これが今世間で『贈与税と相続税の一体化』と資産家を中心に騒がれている一件です。
 具体的に生前贈与がどう見直されるかは分かりませんが、贈与を巧みに利用しての相続税の節税は将来的に難しくなるでしょう。
 それより、あまり知られていないのですが、相続税のことより、
『大切なご家族にいかに円満に財産を継承できるか』
という相続における最重要テーマに対して、この生前贈与の仕組みが、とても有効かつ幅広い目的で使えます。
 ご家族の将来がより安心安全で有利になるように、節税だけに捕らわれず、一歩進んだ活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

ファミリー通信vol.26/いつか必ず起きる相続その時何がおきる?昨年妻に先立たれた80代男性のケース

2021-05-01

『転ばぬ先の杖』とは実に端的に言い得た教えであります。
 我々が日常生活を平穏無事に過ごしていても、いつ何が起きるか誰にもわかりません。 ましてや人はいつか必ずお亡くなりになるものです。
つまり誰にでも人生に一度必ず相続のタイミングは訪れるもので、このとき決して転ぶことがないよう『早めに杖を用意しておいてくださいね』というのが今号のお話です
 先日お会いしたのは、長年連れ添ってきた妻を昨年末に亡くされた80代の男性でした。
 妻には家事や家計の一切を任されていただけに、数か月経ったいま家の中は足の踏み場もない状態という。
 さらに不動産所得のあった妻の確定申告もしなければいけなくなりてんてこ舞いなのだだとか。
 家のどの引出しに何があるかすら分からない状態で、役所や金融機関からの問い合わせや対応に追われる日々が続いていたようです。
 そんなある日、妻が株の取引をしていた証券会社の女性担当者が訪問してきたそうで、
「奥様の相続の手続きを私にお任せください」と提示された遺産整理業務(手数料)の見積りはなんと数百万円…
 ちなみに遺産整理業務とは『遺言書の確認に始まり、家族関係や財産関係を公文書などで確認し、分割協議書の作成や預貯金の解約、不動産等の名義変更、そして10ヵ月以内の相続税の申告』そういった相続人に課せられる業務を代理手続きしてくれるものです。
 相続の手続きは複雑かつ役所や金融機関や様々な専門家と進めるため、大変な労力や時間や費用がかかります。
 提示された金額は高額だったものの、いつ終わるか分からない大変な業務を代行してくれると聞き、すぐにでも依頼したい気持ちになられたそうです。
 しかし数百万円…
 普段関わりのないことだけに、それが常識的な金額なのか判断できなかったことは言うまでもありません。
 ところで相続というのは大きな財産が動くタイミングであります。
 金融機関をはじめ亡くなられた方の担当者には、これをビジネスチャンスと捉える方もいれば、逆にネガティブに捉える方もいます。
 ちなみに今回のケースで証券会社の担当者が相続手続きを任せて欲しい本当の理由をおわかりでしょうか?
 高額な遺産整理業務の手数料もありますが、それよりは口座の解約による証券会社からの資金流出を止めること、と想定されます。
 これは銀行や保険会社においても同じことが言えそうです。
 地方銀行に預けていた預金も、生命保険の保険金も、都会で暮らす子供たちの都市銀行の預金口座に流れていきかねないのです。
 さらに金融資産だけでなく不動産についても言えそうです。
 ようやく利益が出はじめたアパート等の収益物件を、管理が面倒だからと子供たちが売却しようとしたり、相続税が払えないからと破格の安値での売却を余儀なくされたり…
 はたまた亡くなられた病院で、提携先だと紹介されそのまま搬送れた葬儀屋さんにて、
「皆さんそうされていますよ」とか「もう最期ですから」と、ご本人は望まなかったであろう高額な葬儀費用となってしまったり…
 そんな結末を数々と見て参りました。
 結論ですが『相続のタイミングは誰しも必ずやって来ること、そのとき大きな財産が動くこと、と同時に想定外の失敗が起きる危険性があること』
 これを皆さんに知っておいていただきたいと思います。
 ただご安心ください。
 心身ともにお元気なうちは準備ができます。
 残されたご家族が困らないよう、憂いなく相続を迎えるには、税・法律・金融資・不動産といった幅広い資産に対して、
①老後の安心の備え
②円満な財産分割
③相続税納税資金準備④相続税の節税
といった見地から課題を明確にすること。
 それを信頼と経験のある専門家に対策だけでなく、相続が起きたあとの手続きが完了するまでしっかりと面倒をみてもらうこと。
 これに尽きると考えます。
 先述の80代男性の今回の危機に対し水際でお守りできたことを、ご家族から非常に感謝されたことは言うまでもありません。
 ただこういったことはよくあるケースです。
 このことを皆さんに踏まえていただき、早めにご準備をされることを願っています。

 ファミリー通信vol.25/実家や山を相続放棄したい!はたして国は引き取ってくれるか

2021-02-01

 親族がお亡くなりになったことで予期せぬ財産が手に入る…
それが相続というもの。
 しかし相続財産は必ずしも望まれるものばかりではありません。
 今回はそんな相続の相続人となったAさんのお話です。
 Aさんは故郷で一人暮らしをされていた父を昨年亡くし、母は既に他界、兄弟もいないため父の唯一の相続人となりました。
 父が残した財産は実家の土地・建物と山林。 ただAさんには持ち家があり、今後実家に住んでくれる近親者も居そうにありません。
 さらに広大な山林は場所すらわからず、特に使い道もなく、どうしたらいいのかAさんは悩んでおられました。
 売却を考え不動産会社に相談したところ、資産価値がなく売れないと言われ、残念ながらそれはAさんにとって負の遺産でした。
 そこで願わくば相続放棄ができないか相談があったのです。
 バブル期に「土地の価値は上昇を続ける」という土地神話を信じ買い漁られてきた遺産は、このように子孫を困惑させているのかもしれません。
 負の財産継承については、生前から対策を検討される方は多いようですが、譲渡(売買)や贈与で所有権を移すことは出来ても、放棄することは出来ません。
 ただ相続のタイミングには相続放棄という制度があり、もしかしたら負の財産が手放せるチャンスなのかもしれません。
 しかし本当にそんな都合のいいことができるのでしょうか?
 Aさんのようなケースでは、そのまま解決策が見つからず、結局空き家となってしまうことが多いようです。
 さらに悪いのは、その後名義が変えられないまま何代か経た後に、所有者不明土地となってしまうことです。
 今や国土の20%におよぶ所有者不明土地は、誰にも処分することができない莫大な負の財産で、大きな社会問題となっています。
 ではもしAさんが、これらの財産を相続放棄したとしたら…
 そう「国庫に帰属する」つまり国のものになるとされています。
 ただ国も活用できず管理だけは必要となる土地を引き受けたり、所有者不在となり固定資産税が回収できなくなったりを、簡単に了承はしないでしょう。
 そこで国ではいま、歩み寄りの措置として次のような条件つきの相続放棄を認めることが検討されています。
【相続に関する不動産登記法・民法改正のポイント】
①土地所有権の放棄制度の創設
 権利関係に争いがないなど条件を満たす土地が限定。国が所有し相続人が固定資産税を上回る管理料を負担することとなる。
 さらに関連制度で、
➁土地に特化した財産管理制度の創設
 所在不明な人の土地の第三者による管理が可能となる。
③土地の相続登記の義務化
 相続人の一定期間内の名義変更の登記がないと過料など罰金発生。
④遺産分割協議の期限の設定
 相続開始から10年を過ぎると法定相続割合での持ち分分割確定。
 以上、不要な土地が有効活用されるための制度の発足が予定されています。
 我々はご先祖からの大切な財産のひとつである土地をいかに継承していくのか、あるいは有効活用を促すのか、元気なうちに家族と一緒に考えておく必要がありそうです。

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