名義預金」という言葉を聞かれたことはありませんか。
ご自身が子供さんやお孫さん名義でつくられた預金口座に入金し、その通帳をご自身で持っておられる状態をいいます。
私はこの「名義預金」をされている方に実によく出会います。
入金額の多い少ないはありますが、どのご家庭にも一つや二つの名義預金口座があるのではないかと思います。
さてこの名義預金、いったい皆さん何のためにされているのでしょうか?
名義預金を作られたきっかけは例えばこんなケースがあるようです。
例えば銀行などの窓口へ行った際に、
【担当者】
「○○さんは預金をたくさんお持ちなので、相続のことも考えて、そろそろお孫さんに分けておいてあげたらいかがでしょう。お孫さん喜びますよ」
このように勧められたとします。 すると勧められたお客様は、
【お客様の気持ち】
「かわいい孫たちには幾らか財産を渡してあげたい。税金もとられたくない。かといって今現金を渡すと孫たちはすぐに使ってしまうかもしれないし、自分の財産が減るのも心配。通帳を自分が持っていればお金が必要なときはいつでも引き出せるし・・・」
そんな心境になるようです。
この名義預金をはじめることでお客様の願いが叶うのであれば、お客様も喜ぶ、担当者も喜ぶで双方にとって良いことだと思います。
しかしこの名義預金、お客様の思いがきちんと果たせるようになっているのでしょうか?
もしかしたら、名義預金をつくったことで、
①将来相続税がかからない方法で
②孫にあげた(贈与できた)
と勘違いされておられるのではないでしょうか。
下の図をご覧ください。
生前にあげた(贈与した)つもりだった孫1の名義預金は実は法律上、贈与されたことになっていません。
なのでご自身が将来お亡くなりになった際、ご自身の相続財産として扱われます。
相続財産は図のように通常法定相続人で分けられます。
よってお客様が渡したかった孫1のものにはならないのです。
また贈与がされていないため当然相続財産のひとつとして計算され、相続税の対象にもなります。
このことを知らないままお亡くなりになり、天国からこの状況を見て何も出来ない自分なんて想像したくないですよね。
ではなぜ名義預金は贈与されたことになっていないのでしょうか。
そもそもお客様の誤解を承知で名義預金をつくらせる金融機関の担当がいるなんて考えたくないですが・・・
贈与は次の定義にそってないと認められないのです。
《贈与の定義》
財産を渡す人(贈与者)ともらう人(受贈者)がそれぞれ「あげる」と「もらう」の認識がないといけない。
つまりもらう人が知らないところで、あげる人が勝手につくる名義預金は贈与としても認められないのです。
結果贈与されていないから相続財産となり、法定相続人で分けられることになったり、相続税の対象にもなるのです。
この名義預金、本当に散見されます。
皆さんも気をつけられてください。
あなた自身も困らないようご両親にこのようなことがないか尋ねてみられてください。
あわせて生命保険でも同じことが起こっています。
■契約者/ご自身
■被保険者/お孫さん
■受取人/ご自身
お孫さんがお亡くなりになるとその生命保険金をご自身が受取るというとんでもない形態になっています。
これも生命保険というカタチの財産をお孫さんにのこしてあげたいというお気持ちで加入されたケースが多いようです。
とても残念なことですが、これも名義預金と全く同様に贈与されておらず、ご自身の財産として将来相続財産となり、
保険の契約権が法定相続人で分けられ、そして相続税の対象として計算されることになります。
ちなみに私はこれを「名義保険」と呼んでいます。
名義預金に名義保険、
それをお持ちだったことに気づかれた方は当然ですが、びっくりされ悔しさや悲しみすらお感じのようです。しかし手遅れにならず早く気づけたため、改めて対策を打たれることが可能になっています。
もし同じ状況であったり不安にお感じでしたら、一度私までご連絡いただけましたら個別にアドバイスさせていただきます。
今回はこのあたりで。