ヒジノ通信vol.13/日本の食を担う農家の相続は今後どうなる?

ある農家にて…
隠居されたお祖母ちゃん(85歳)、現役の父(60歳)と後継者予定の息子さん(30歳)。
 このご一族から相続診断のご依頼を受け、先日結果報告に伺いました。
 そこでこのご一族の問題点であろう部分について、指摘させてもらったときのお話です。
 老後の財産管理であったり、相続の財産分割であったり、相続税であったり、将来起こりうる懸念事項については、皆さんの感じ方はそれぞれ異なります。
 まず会社を起業された息子さんが心配だと感じられたのは、先でお父さんが亡くなったとき自分と共に相続人となるであろう兄弟に、最低限受け取れる財産割合つまり遺留分があることでした。
 もし後継者の自分が、田畑をはじめほぼ大部分が土地という財産を全て受け取った場合、もし兄弟から請求されると代償として相当額の現金を払わなくてはいけなくなるのです。
 正直農業には興味がなく、仲のいい兄弟とは争いたくはないし、こんな大金も用意できないと愕然とされました。
 そして息子の思いとは裏腹に、現役で農業をされている父の思いは違っていました。
 父が不安と感じたのは、
「先祖代々引き継がれてきた農業が先々どうなるのか?」
ということでした。
 後継者がいないこと、そしてもし相続税が払えなかったら、たとえ二束三文でも土地を売って現金を用意しないといけなくなり、農業そのものが続けられなくなるかもしれないのです。
 初めてお会いしたときから感じていましたが、父は先祖代々の家業である農業に特別な思いを持っておられるようでした。
 税金というより農業が途絶えてしまうことが心配なのです。
 そんな父の思いに対して息子はこんな疑問を感じていました。
 農業は雨の日も風の日も休まず大変な労力が必要なのに、なかなか採算がとりにくい。
なのになぜ父は兼業までして農業を守っているのだろうか?
 商売人の家に育った僕には難しい問題ながら、息子さんの気持ちは理解することができました。
 しかし今まで僕がお会いした農家の方々のお話から感じているのですが、農業や田畑を守ることは理屈や損得ではなく、先祖代々当たり前のこととされてきたのかもしれません。
 そしてこの息子さんのように農業を継ぎたくないと感じているご子息が増えているのも事実です。
 今回私が最も課題意識を感じたのは、父と息子の世代間での考え方のギャップです。
 考え方の違いがあるのは仕方ないことですが、本当の問題はこういったギャップがあるにも関わらず、問題が放置されていることです。
 今回は僕が間に入ってお話させていただいたことで、お互いの思いの相違や問題がハッキリしました。
 この問題をどう解決するかはこれからですが、農家に限らずこのような状況はよくあることです。
 まずはご家族の抱える問題について少しでも考える機会をもってもらえたらご安心ではないでしょうか。
 相続とは単に財産を継ぐことだけでなく、この財産を築いたり守ってきたご苦労や思い、そして子や孫にどうして欲しいという願いも一緒に継承されていく必要があると考えています。

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