ファミリー通信vol.39/高額借入によるアパート経営 その実態とは

今回は弊社代表である私が運営しているYouTube動画『相続FPヒジノチャンネル』に以前ゲストで登場されたある会社経営者Aさん(39歳男性)の話です。

 Aさんの実家の相続に関するご相談の話を進めていくなかで、Aさんが本業以外に興味深い事業をされていることが見えてきました。
 銀行から多額の借入れをして賃貸アパートを建て入居者から家賃収入を得る、つまりアパート管理事業を行っていたのです。

その借入れ額はなんと2億円超、そもそも30代で何故そのような大きな借入れが可能だったのか?
それだけ借入れする魅力は何なのか?
 疑問と興味は膨らみ、その賃貸経営の実情に迫ることとなりました。
 なぜなら私の経験上、アパート管理事業は相続税対策を目的として始められる方が多く、実際に十分な収益が得られていなくても放置状態で、借入返済すら危ぶまれるケースも散見されるため心配になったのです。

相続税のかかる方にとっては相続税評価額の高い(=相続税が高い)土地の上に、
●銀行借入れをして
●アパートを建てる
ことで相続税が何百万円~何億円も節税できるこの手法は、たとえ事業としての収益がマイナスとなっても、相続税を大きく減らせることがメリットとなります。
 ところがAさんの目的は相続税対策ではありませんでした。

 Aさんの事業を実際に分析してみると、家賃収入は年間1300万円で、これに対する支出は借入返済だけで年間▲1000万円ありました。
 つまり表面的な利益は300万円、ただこれはサブリース(一括借上)という特殊な賃料収入の契約により、収入はある条件のもと10年間は固定ですが、その後は約束されていません。
 賃料が大きく減ることや大きな大規模修繕費用が発生することも考えられます。

 それに対して借入返済は今後の金利上昇を考慮すると35年間▲1000万円より下がることは考えにくく、どこかで収支が逆転し収益がマイナスになることが想定されます。
 つまり経営を続ければ続けるほどマイナスが膨らんでいく危険性がありました。
 更に2億円超の借入に対して返済総額は3億5千万円超にもなるのです。

 「私はどうすればいいのでしょうか?」
 不安になったAさんに収益改善のための幾つかのアドバイスはさせて頂きました。
 しかしそれは如何にして収益を増やすかではなく、どうやってマイナスを減らすかを考えるのが精一杯の状況でした。

 世間では事業として十分な収益を出されている不動産オーナーもいらっしゃいますが、人口減少下で住宅の供給過多となっているエリアの多い我が国においては、Aさんと同様の問題を抱える方が沢山おられます。
 不動産オーナーの皆さんは、今一度経営状態がどうなっているのか現状確認されることをお勧めしたいと思います。

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