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自身の相続のことが気がかりでありながら、「まだ早いから」とか、「わが家には遺す財産がないから」とか、
「うちの子ども達は仲がいいから大丈夫だから」といった、
あまり根拠のない理由を自身に言い聞かせ、遺言を考えることを先延ばしにされる方をよく見かけます。
一方昨今のコロナウィルスの世界的な感染拡大の影響による高齢者の死生観の変化から、「人はいつ死ぬかわからないから」と遺言を考える方は増えています。
ちなみに筆者もまだ53歳で本格的な遺言は早いかなとは思いつつ、すでに自筆で遺言書を作成し法務局で保管してもらっています。
それは、妻や子に遺せる財産はまだまだ不明確ではあるものの、そんな状況でも今すぐに用意しておくべき『とりあえず遺言』なるものであります。
とりあえず遺言とは、①もし今自分が亡くなったとしても、家族を困らせないために
②万一の事故や病気などで遺言が書けなくなってしまう前に
とりあえず必要最小限の内容で念のために作っておくものです。
預貯金などは最終的にどのくらい遺せるかまだ分かりませんが、
●自宅の土地・建物は 妻が住み続けられる ようにしておきたい
●会社の自社株は後継 者の長男に確実に渡 さないといけない
といった、すでに気持ちが固まっている財産があれば尚更です。
もしこれら財産の行き先を指定する遺言書が無い場合、妻が自宅に住み続けられなくなったり、後継者に実質的な経営権が移らなかったりと、大きな損失が発生するリスクがあるからです。
このような普段考えることのないご自身に潜むリスクは、法律・税・金融・不動産・・・と幅広い知識がないと気が付かないため、まずは終活や相続の実務経験のある専門家に診てもらうことをお勧めします。
そのうえで将来本格的な遺言書を作成するまでの間の放置できないリスクへの備えとして、『とりあえず遺言』を作成しておかれるとご安心かと思います。
とりあえずとはいえ、一部の財産にのみ言及した内容であったり、すべての財産を誰それにといった包括的なものであったりするだけで、ちゃんとした遺言書としての効力を持っています。
それ以外の財産については先で追加で遺言書を作成したり、より効力のある公正証書と差し替えたりと、お元気なうちは財産の行方を自由に指定変更することができます。
ここで『とりあえず遺言』をどういう形式の遺言書として作成するのがベストかですが、
筆者としては、簡単な内容のものを自筆で作成し、それを法務局で保管してもらうのが一番だと考えています。
ただ場合により、公正証書による本格的な遺言が必要な方もおられます。
それに形式のまえに、「どの財産を・どれだけ・誰に」といった内容が大事です。
この内容が、財産継承をいかに円満かつ損失無く進めることができるかのカギとなりますので、やはり作成前に専門家に相談されることをお勧めします。