ヒジノ通信vol.5/認知症と相続の対策について

『認知症』という言葉を最近よく耳 にしませんか。
認知症になると記憶ができないとか徘徊するとか、ご本人もお世話される方も大変だとよく聞きますが、更に大変なことが起きるのをご存知でしょうか?
先日、ある税理士さんの勉強会で聞いたのですが、今から10年後には、高齢者の4人に1人が認知症になるそうです。
 今後、高齢化社会が進む中で、僕はこの数字を危機的状況だと感じます。
 誰しもご自身がそうなることを想定して、今から万全の対策を打っておかれる必要があるのではないでしょうか。
 では、かつて痴呆症と呼ばれた認知症とは、どのような状況を言うのでしょう。
ここまではよく知られていることだと思います。
 実は認知症になると、それまで出来ていた財産の取扱いや様々な法律行為がご自身で出来なくなるのです。
 例えば銀行預金の引き出しや不動産の売買契約や遺言書の作成といったことなどです。
 そしてそれ以降はご本人に代わり『成年後見人』が代理で行うようになります。
 これは成年後見人制度という「判断能力が不十分な人を法的に保護し、支える為の制度」によるものです。
(認知症だけでなく、知的障害や精神障害の場合も同様です)
 ここで法律行為とは、
①不動産や預貯金の管理
②介護施設への入所の契約
③相続での遺産分割協議
といったものですが、ちなみに預金を下ろす場合、使用目的が認知症のご本人にどうしても必要なこと以外は引き出しが出来ません。 たとえば介護人が介護にかかる費用や生活費など、どこまで許されるかの線引きが難しいようです。
 成年後見人が認知症の方の財産権を守るため、それ以外の方はたとえ身内であっても、財産に関わることは何も出来ません。
 ちなみに、成年後見人は認知症になる前に、公正証書にて子供さん等に指定することが出来るのですが、指定がなければ、家庭裁判所で弁護士などの第三者に指定されることもあります。
 望まない他人に財産管理されるかもしれないことを考えると、前もって成年後見人を安心できる人に指定されておくことがご安心かと思います。
 ところが、そうは言っても、認知症になり成年後見人がつくと、認知症のご本人が望むサービスに必要な資金も、ご自身の口座から出すことが出来ず、もどかしく理不尽な結果になる場合も想定されます。
 この現状について皆さんはどう思われますか・・・
 でもご安心ください。実は成年後見人制度の他に凄い制度があるのです。
 それは信託です。信託銀行とか投資信託とか、この言葉は聞かれたことがあるかと思いますが、それぞれ少し意味合いは違います。
 これは簡単に言うと、ご自身(委託者)の財産を一旦第三者(受託者)に信託して渡してしまう仕組みです。
 そして、ご自身が先で認知症になったりお亡くなりになったりした時に、事前にご自身が指定した通りに、ご自身や子供さんなど(受益者)に確実に財産が渡せるように出来る仕組みです。
 ご自身の財産が一旦第三者(受託者)に移転しているので、認知症になった際にも財産を動かすことが出来るのが凄いところです。
(次頁にて図解説明)
 例えばこんなことが出来るとしたら如何でしょう。 障がいをもつ孫の将来が心配のお祖父ちゃんが、ご自身がお亡くなりになった後、相続財産を孫の生活費として毎月定額で渡してあげるようなことができたら。
 通常孫は法定相続人ではありませんので、何もしなかったら相続財産を孫に渡してあげることは出来ません。
 遺言書で渡すことは出来ますが、毎月幾らずつでなく一括で渡すようになりますので、孫が生活費以外で使ってしまったり、未成年の場合に付く後見人が使い込む事例もあったりして一抹の不安も残ります。
 それに対して、財産の行く先や受取り方まで今指定できるのが信託です。
 信託の仕組みは下図の通りですが、委託者(お亡くなりになる当事者)、受託者(財産を預かる方)、受益者(財産を受け取る方)、ケースによっては指図権者(財産に対して指図する方)をたてることが出来ます。
 先述の話であれば下図のように委託者が祖父、受託者が子、受益者が孫になります。
 信託はパズルのように色々な使い方でその可能性は未知数のようですが、これから財産継承において中心的な存在になることは間違いないと思われます。
 信託できる財産は預貯金や不動産といった現存する財産になりますが、最近はお亡くなりになった時に生命保険会社から支払われる保険金を信託できる仕組みを商品化した保険会社もあります。
いつやって来るかわからない相続のタイミングで、必要な現金が必ず準備できる『保険金』を原資として信託する仕組みは、今後相続対策において重要な役割を果たすと思われます。
 このような使える制度を、ご自身の思いに合ったカタチで取入れられることをご検討されてみてください。

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