昨年から配偶者居住権の新設や自筆証書遺言の保管制度の新設と、約40年ぶりに民法の相続部分の改正(相続法の改正)が順次行われてきました。
ヒジノ通信でも第18号や第23号でとりあげさせていただきましたがご記憶にございますでしょうか。
今回の改正はライフスタイルや家庭環境の変化により、旧来の法では不十分となっていた、とくに「妻の権利」が更に守られることとなった権利拡大が中心であります。
その中でも昨年施行された、重要ながらも未だ十分認知されていない、
『遺留分制度の見直し』について皆さんに知っていただきたく、今号のテーマとさせていただきました。
遺留分とは、相続が起きたとき、その相続人が受け取れる最低限の権利の割合のことを言います。
例えば右下イラストのように、亡くなったお父さんの財産が自宅2000万円のみの場合、法定相続割合は長男・長女それぞれ1/2の1000万円ずつとなります。
そしてこの法定相続割合の半分、それぞれ1/4の500万円が遺留分ということになります。
ここでもしお父さんが、財産の全てである実家を長男に相続させる旨を、遺言書に書いていたとしましょう・・・
遺言書の通り実家は一旦長男のものになるのかもしれません。
しかしここでもし長女が不満を感じ権利を主張、長男に遺留分を請求することとなったらどうでしょう?
そうなると長男はこれを無視するわけにはいきません。
かといって実家は分けることが出来ませんし、代わりに現金を渡そうにも、お父さんから受け取った財産に現金はありません。
しかも長男ご自身にも、そのような大金が用意できないとしたら・・・
ただこういったケースにおいても、一般的に行われてきた解決策がありました。
実家の1/4(以上)の権利を長女に持たせる方法です。
ところがこの度の法改正により、この方法では解決できない危険性が高まりました。
さてどういうことか?
上記のケースにおいて、従来は遺留分侵害された長女は『遺留分減殺請求権』をもって長男に遺留分を請求してきました。
前述のように、長女も1/4(長男は3/4)と最低限の持ち分を登記することで、長男が金銭的な負担なく解決出来ていました。
しかし法改正により長女の権利は『遺留分侵害額請求権』に変わりました。
これにより長女は遺留分侵害額を、(実家の持ち分でなく)金銭で長男に払わせることができるようになったのです。