親族がお亡くなりになったことで予期せぬ財産が手に入る…
それが相続というもの。
しかし相続財産は必ずしも望まれるものばかりではありません。
今回はそんな相続の相続人となったAさんのお話です。
Aさんは故郷で一人暮らしをされていた父を昨年亡くし、母は既に他界、兄弟もいないため父の唯一の相続人となりました。
父が残した財産は実家の土地・建物と山林。 ただAさんには持ち家があり、今後実家に住んでくれる近親者も居そうにありません。
さらに広大な山林は場所すらわからず、特に使い道もなく、どうしたらいいのかAさんは悩んでおられました。
売却を考え不動産会社に相談したところ、資産価値がなく売れないと言われ、残念ながらそれはAさんにとって負の遺産でした。
そこで願わくば相続放棄ができないか相談があったのです。
バブル期に「土地の価値は上昇を続ける」という土地神話を信じ買い漁られてきた遺産は、このように子孫を困惑させているのかもしれません。
負の財産継承については、生前から対策を検討される方は多いようですが、譲渡(売買)や贈与で所有権を移すことは出来ても、放棄することは出来ません。
ただ相続のタイミングには相続放棄という制度があり、もしかしたら負の財産が手放せるチャンスなのかもしれません。
しかし本当にそんな都合のいいことができるのでしょうか?
Aさんのようなケースでは、そのまま解決策が見つからず、結局空き家となってしまうことが多いようです。
さらに悪いのは、その後名義が変えられないまま何代か経た後に、所有者不明土地となってしまうことです。
今や国土の20%におよぶ所有者不明土地は、誰にも処分することができない莫大な負の財産で、大きな社会問題となっています。
ではもしAさんが、これらの財産を相続放棄したとしたら…
そう「国庫に帰属する」つまり国のものになるとされています。
ただ国も活用できず管理だけは必要となる土地を引き受けたり、所有者不在となり固定資産税が回収できなくなったりを、簡単に了承はしないでしょう。
そこで国ではいま、歩み寄りの措置として次のような条件つきの相続放棄を認めることが検討されています。
【相続に関する不動産登記法・民法改正のポイント】
①土地所有権の放棄制度の創設
権利関係に争いがないなど条件を満たす土地が限定。国が所有し相続人が固定資産税を上回る管理料を負担することとなる。
さらに関連制度で、
➁土地に特化した財産管理制度の創設
所在不明な人の土地の第三者による管理が可能となる。
③土地の相続登記の義務化
相続人の一定期間内の名義変更の登記がないと過料など罰金発生。
④遺産分割協議の期限の設定
相続開始から10年を過ぎると法定相続割合での持ち分分割確定。
以上、不要な土地が有効活用されるための制度の発足が予定されています。
我々はご先祖からの大切な財産のひとつである土地をいかに継承していくのか、あるいは有効活用を促すのか、元気なうちに家族と一緒に考えておく必要がありそうです。